大理石

<労働者性の判断基準>

1. 契約書の名称は関係ない  

2. 労働者性の判断要素について  

3. 判例について  

   著名な最高裁判例としては、例えば以下のようなものが挙げられます。

<横浜南労基署長事件:最判平成8年11月28日・労判第714号14頁>

車の持込み運転手(傭車運転手)が労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらないとされた事例

<藤沢労基署長事件:最判平成19年6月28日・労判第940号11頁>

 作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工が労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらないとされた事例 

また、労働者性の判断基準に関する判例については、独立行政法人 労働政策研究・研修機構の以下のリンクで詳説されておりますので、併せてご参照ください。

https://www.jil.go.jp/hanrei/conts/01/01.html

   皆さんの中には、ある会社と業務委託契約や請負契約を締結しながらも、現実にはあたかもそこにいる従業員、すなわち労働者とされる方と同様の扱いを受けている方もいるのではないかと思います。我が国の労働関連法令は社会立法という側面が強く、解雇に係る規制に代表されるように労働者の権利が手厚く保護されています。その結果、使用者たる会社の中には、 これらの労働法制の適用を回避したいという考えから、業務委託や請負契約という形態で働かせようという動機が働きやすい面があります。

 ここで、「労働者」の定義について見ておきましょう。

 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を

 支払われる者をいう(労働基準法第9条)

 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう(労働契約法第2条第1項)。

   とされています。

 規定からもお分かり頂ける通り、「労働者」とは、使用されていることの対価として賃金を得ている方を指す、ということです。一般に、使用従属性等と言ったりします。労働者性の有無の判断は、この使用従属性の判断ということになります。この使用従属性の判断要素については後述します。

 もちろん受託者・請負人の側としても、中には雇用という会社との使用関係というものに縛られず、自由な働き方をしたいといった考えの下で敢えて雇用契約を望まない方もいるかとは思います。しかし、業務委託契約・請負契約だと言われながら、朝から晩まで業務委託元で時間を管理されて業務を行っているといった場合はどうでしょうか。会社従業員と同じように働きながら、突然業務委託契約の終了を告げられたのであれば、その業務にだけ関わっていたような場合であれば、次の業務委託元を探すまでは失業状態になってしまいます。

 もちろん、ここで悩む方の会社との契約は、業務委託契約・請負契約等であって、雇用契約ではないということでしょう。しかし、あきらめるのはまだ早いです。労働基準法その他の労働関係法令の適用を受けるかどうかは、その働き方等の実態によって判断されるものであって、契約書に記載された名称と皆さんの契約関係の規律とは関係ありません。従いまして、その業務委託契約が実際には雇用契約である場合、業務委託として働いている方は実質的には労働者であったものとして、法の保護を受け得ることになります。

 労働者性の判断については、明確な条件が定められているというわけではなく、あくまでも諸々の要素を踏まえての総合判断ということになります。この判断基準については、昭和60年12月19日・労働基準法研究会報告 (労働基準法の「労働者」の判断基準について)が大変参考になります。

https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/library/osaka-roudoukyoku/H23/23kantoku/roudousyasei.pdf

<仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無>

 もし、一方当事者として対等な関係にあるのであれば、諾否は自由になし得ることから、労働者性を否定する方向に働くということになるでしょう。一方で、指示されたことに従わなければいけないということになれば、それはまさに使用従属性を肯定する要素になるということが言えます。

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<業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無>

 業務委託や請負ということになれば、勿論、一定の指図はあるとしても、業務の内容をどのようにするか、どのように進めるか等といったことについて使用者(委託者)側は微に細に指図ということもないかと思われます。一方で、労働者ということになれば、特に会社における非管理職等をイメージして頂ければお分かりの通り、上司たる部長や課長の指揮命令を受けて業務を行うことが一般ということになります。 

<拘束性の有無>

 時間的・場所的拘束性がここでは主眼となります。業務委託や請負ということになれば、業務の種類によって一概には言えない点あるものの、一定の業務を遂行したり仕事を完成させることが主眼ですから、時間や場所を拘束することは必ずしも本質ではないと言えるかと思います(会社によっては、日中、外注先のITスタッフが常駐するといった場合もあるかと思いますが、その場合は、少なくとも指揮命令関係は会社との間ではありません)。 

 一方、労働者である会社の従業員であれば、9時から17時という時間、会社という場所で拘束を受けることが一般であるということになります。

 

<代替性の有無>

 業務委託や請負ということになれば、一定の業務を遂行したり、仕事を完成させることが重要となりますので、一般的には「誰」がこれを行うかは重要ではなく、補助者を使おうが何であろうが「誰かにさせれば良い」ということになり、代替性が認められやすいと言えます。

 一方、労働者であれば、上記に述べた指揮命令関係との関係で、「その人」に労務提供をして貰うことが重要となって来ますので、一般的には代替性は認められないということになります。

<報酬の労務対称性の有無>

 業務委託や請負ということになれば、一定の業務を遂行したり、仕事を完成させることに対して報酬を支払うということが通常であり(勿論、時間単価で業務委託費用が決まるものはあります)、労務を提供したことと報酬には必ずしも比例関係が認められるものではありません。

 一方、労働者であれば、残業をすれば仕事の完成には関係なく残業代が支払われますし、有給休暇ではなく会社を欠勤したということになれば、その方の業務はきちんと遂行されていたとしても賃金は差し引かれることがあります。

(以下は労働者性の判断を補強する要素と分類されているものです。これら1つ1つが重要な要素というよりは、上記に掲げた要素の有無を判断する際に用いられるものという性格とお考え下さい。)

<事業者性の有無>

 業務委託や請負ということになれば、何らかの生産手段を自ら有していることが多いでしょう。労働者であればそれらは通常は稀ということが言えます。もっとも、ケースバイケースですので、一概には言えません。

<機械、器具の負担関係

 業務委託や請負ということになれば、その業務の遂行のため、あるいは仕事の完成のため、高価な器具等を所有していることも少なくありません。一方で、労働者であれば、その様な器具等を自ら会社でその業務の用に供するのはあまり一般的ではありません。

<報酬の額

 会社であれば、年次や職位による一定の給与テーブル等があることも多いでしょう。その額に比して著しく報酬の額が高いということであれば、業務委託や請負とされることが多いと言えそうです。

 一方、多少の凸凹はともかく、基本的には給与テーブルに沿った額だということであれば、労働者性を肯定する要素になると言えます。

<専属性の程度

 業務委託や請負であれば、会社に専属することは必ずしも前提にはなっていないことが通常かと思います。

 一方、労働者であれば、最近は次第に変化はしつつあるとは雖も、基本的には会社の業務を第一に労務を提供することが通常と言えます。

もし、あなたが事実上は従業員と同様に働かされていたというような場合には、きちんとその旨の主張をして労働者性を獲得することが、自分自身を労働法制の保護下に置くことにつながります。

いま一度ご検討の上、ご相談されることをお勧め致します。お気軽にお問合せ下さい。

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