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  • 弁護士 岩山勝湖

最近のニュースから(コロナウイルスと業務妨害罪)

先日は、コロナウイルスと傷害罪について書きました。他にも、ニュースで取り上げられているものとして、(威力または偽計)業務妨害罪があります。ニュースでは、傷害罪はともかく業務妨害罪で立件する云々という記載もあります。

業務妨害罪は、一般的には抽象的危険犯と分類されています。ここで難しい言葉が出て来たので少し注釈しますと、侵害犯と危険犯という犯罪の分類方法があります。侵害犯とは、今回出て来た傷害罪や殺人罪等が該当しますが、法益侵害が現実に発生したことが必要とされている犯罪になります。一方で、危険犯とは、法益侵害が現実に発生するおそれがあれば成立する犯罪ということになります。

更に危険犯は、抽象的危険犯と具体的危険犯に分類されます。前者は、法益侵害が発生するおそれのある行為を行うことを以って犯罪が成立するもの、後者は法益侵害が発生することまでは求められないが、その危険の発生までは求められているものを指します。雑な言い方を承知で言えば、何らかの危険が存在することを前提に、

・何かやらかしたら犯罪 抽象的危険犯

・何かやらかして、ヒヤリハットまでいったら犯罪 具体的危険犯

・何かやらかして、ヒヤリハットを超えて結果が起きてしまった 侵害犯

というところでしょうか。

改めて、業務妨害罪は抽象的危険犯と申し上げました。つまりは、実際に業務が妨害されたことは不要、業務が妨害される具体的な危険も不要、その行為によって業務が妨害されると一般的に思えるだけの危険があれば成立し得るということになるわけです。

平時であれば、「オレ、今風邪ひいているんだ」ということでは、周りの人々も「(うつすなよ、とは思いつつ)気をつけてね」でまあ終わるのでしょう。しかし、「オレは今、コロナ(ウイルス陽性)だ」とでも言ったらどうなるでしょうか。現時点においてコロナウイルスは感染力が強く重篤な結果を生じさせるウイルスであるという認識が一般であり、一人でも感染者がいれば、店を閉めたり消毒をしたり、濃厚接触者について検査したりという状況にあるわけです。更には、風評被害といったこともついて回ります。今の状況下では、その様な発言があった時点で業務が妨害されるということは明らかです。

先日は、電車内でも「オレはコロナだ」と言って偽計業務妨害罪で逮捕される事件が発生したそうです。これにはあきれるしかないのですが、この方がコロナウイルスに感染していないから「偽計」に該当するということでしょうか。私は、公然と行われたのであれば「威力」に当たるように思いましたが・・・(実際、威力か偽計かの区別は判然としない場合があります)。

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