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  • 弁護士 岩山勝湖

最近のニュースから(準強制性交罪の成立を認めなかった事件)

知人から掲題に関する下記の記事のリンクを紹介頂いて、これってどういうこと?との質問がありました。

https://www.nikkansports.com/general/news/202001240000767.html

さすがに記事になっている通り、かなり珍しい事件ということが言えるかと思います。原典に触れているわけではないので、断定的なことは申し上げられませんが、検察官立証の原則(話は反れますが、刑事訴訟法の大家であられた渥美東洋先生が、「無罪推定の原則」という訳が間違っていると仰っていたことを思い出しました)の下、立証しきれなかった、故意があると合理的な疑いを容れない程度までの心証に至らなかった、というところなのでしょう。「 1文字違いだったため自分の名前を呼ばれたと勘違いした元被告(人)が、女性が性交に応じると思い込み、誤信させたという認識がなかった可能性がある 」という箇所がそれを示しています。

「女性が『カズキやんな』と知人の名前を言ったところ、元被告(人)は『カズアキ』と自分の名前を呼ばれたと思い込み、特に『返答はせず』暗い室内で性交した」という部分、『返答はせず』という箇所ですが、積極的にYesと告げる、つまりは女性をカズキと誤信させるような発言があればアウト(犯罪の成立が認められる)ということは誰も争いがないでしょう。では、消極的に何も告げないことはセーフ(犯罪の成立が認められない)ということを意味するものではありません。

古い司法試験の短答の問題にあったような記憶がかすかにありますが、例えば、お店で買い物をして、お釣りを受け取る際、実際により多めに渡されたことを黙っている場合でも詐欺罪が成立し得る、という話を聞いたことがあるでしょうか。場面は異なるので適切な例かどうかはともかく、黙示であっても故意は認められ得ます。「沈黙は金なり」ということではないのです。

被害者の女性の立場からすれば、何ともやるせない気持ちになることとは思いますが、

本件については、元被告人が統合失調症であったとの認定事実が判決に大きく寄与したものであることは否めないように思います。

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